ある時点から、編集者の仕事に興味があった。
実家からそう遠くない場所に出版社があり、物理的に最も身近な職業の一つだったからかもしれない。一方で、毎晩夜遅くまで煌々と明かりが灯っているのを見て、「こんな働き方はしたくないなぁ」とも思っていた。
しかし、それが今ではどうだろう。気づけば自分も、煌々と明かりが灯った深夜のオフィスビルの住人になっている。しかもタチが悪いことに、私がオフィスに居残るのは、決してその業務が好きだからとか、磨きをかけたいからとかではなくて、劣等感を時間で埋め合わせしたいからなのだ。手を止めたら負け、そんな気がしているから。
そんな、今の仕事に活路を見出せず悶々とする日々の中で、編集者への興味が再燃した。家の近所の図書館で「編集者」と検索して手当たり次第に「編集者がなんたるか」を知れそうな本を漁っていたら、三浦しをんさんの職業人インタビュー集『ふむふむーおしえて、お仕事!ー』(以下『ふむふむ』)という本に巡り合った。
三浦しをんさんは好きだ。そんなに多くの彼女の作品を読んだことがあるわけではないけれど、読んだことのある作品は全部好きだ。つまり、これは読むしかない。
『ふむふむ』は、全15職種、16人の職業人に、小説家の三浦しをんさんがインタビューをするというもの。職人からアスリート、土産物屋の店主、そして編集者まで、改めて目次を見返すとえらいバリエーションの幅だ。
でもその振れ幅の広さのお陰で、私はこの本を読み終わったとき、自分の価値観をより広い視野から確かめることができた気がする。
どんな仕事の話に共感できるか、惹かれるか、という「点」を集めていったら、自ずと自分の考え方が見えてきた。
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